はじめに

RSA暗号は、インターネットでも広く利用されている話題の暗号です。

この暗号をはじめとする現代の暗号は、かつて戦時中に一部組織でのみ使用われた暗号とは異なり、情報セキュリティを確保するための基盤技術として、情報ネットワーク社会に生きる我々に安心を与えてくれるものです。無意識のうちに利用している方もいるでしょうし、既にこの社会にとって必要不可欠なものとなっています。

こうした現代暗号には、RSA暗号の他にも DES(デス、ディ・イー・エス)やAES(エー・イー・エス)など、数多くの方式があります。その多くは複雑な設計であるのに対し、最も特徴的なRSA暗号のエッセンスは非常に単純かつ興味深い理論によって成り立っています。この「からくり」がどんなものなのかを知らないままでは、何だかもったいなくありませんか?

この読み物は、現代暗号をRSA暗号を中心に分かり易く解説したものです。詳しい話はこの先を読んで頂くとして、今ある知識と、ここまでの説明で興味が湧いた方は是非お読みになってみて下さい。読者対象は 中高生純文系 の大学生、そして専門書ではRSA暗号を理解できなかった理系の大学生です。これは専門書で理解できる方や、既に理解している方のための読み物ではありません。

私は、RSA暗号に内包されている「数のマジック」の面白さを大勢の方々に感じてもらいたいと思い、数学が得意でない文系の友人に「なぜ専門書ではRSA暗号を理解できないか」を尋ねてみました。すると彼は「言葉で表現されているうちはよいけれど、難しい数式が出てきた途端に理解できなくなる」と答えました。つまり『2でわった余りを…』と書いてあるうちは理解できるのに、『mod 2』と書かれると 脳ミソパニック になってしまうのだそうです。さらに、式だけが書かれていても、それがどのような理由から必要な計算なのか分からないために、感覚的に納得できないとも語りました。

そこでこの読み物では、多少まわりくどい部分もありますが、数式による手順だけでなく、できるだけ言葉による説明を心がけました。そして、なぜその数学的手順を踏む必要があるのか という説明により、感覚的に理解できることを重視しました。場合によっては専門書とは異なる考え方で説明し、必要な数学的知識が少なくて済むような配慮もしました。一般的な高校生や根性のある中学生、そして ハイパー小学生 であれば、きっと理解して頂けると思います。

1997年8月10日 初版
1998年8月7日 改訂
2003年3月1日 改訂

伊藤 正史

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