MaitouAPC 概要

「MaitouAPC」は、小規模配信向けの 自動番組制御装置 です。事前に作成した制御データに従って、マトリクススイッチャー (SW’er) や送出サーバに制御を行うことで、番組の自動送出を支援します。日本国内では APC (Automatic Program Controller)、APS (Automatic Program controll System)、海外では Program Automation 等と呼ばれる部類のシステムに当たります。


監視操作端末の画面サンプル

近年、情報技術の急速な発達により、小規模な放送局やネット配信が増えました。その多くは素材の垂れ流しか手動操作により送出されています。一方、大規模な放送局では自動番組制御装置による自動送出が当然となっています。この装置はとても安定していて高機能ですが、そのぶん大掛かりで高額でもあり、気軽に導入できるものではありません。

そこで、既存の自動番組制御装置へのアンチテーゼとして、小規模向けの自動番組送出装置というアプローチがあっても良いのではという着想に至り、アイデアの具現化を始めました。描いたのは「PC 1 台で送出制御、プレイアウト、配信まで行えるオールインワン」です。幼い頃から培った IT 技術を生かし、既存の概念に捕われない設計をすることで、ポストモダン型の APC の実現を目指しました。各機能を組みわ合せて実現する大規模化しがちな設計ではなく真に必要な機能に絞り、それらをソフト上で実現することをポリシーとし、APC の各機能を UNIX 系 OS の枯れた機能にマッチさせることで安定かつシンプルな設計を心がけています。実装では、各被制御機器とのインターフェースをモジュールとして分離し、APC 本体から抽象化した共通 API による制御を実現したことで、音声や映像配信など様々な被制御機に汎用的に対応できるようなっています。

臨災局への無償提供

2011年3月11日の東日本大震災。自らも東京で大きな揺れに合い、初めて心から身内の安否を絶望的に思ったり、原発事故や食料不足を目の当たりにしたり、いつ揺れが収まるのかという不安に直面しました。この甚大な震災を受け、東北各地に放送法に基づく臨時災害放送局(臨災局)が開局。その一つ「女川さいがいエフエム」から、臨災局で使える安価で小規模な APC が無いか、Facebook を通じて相談を受けました。現地にお招き頂き、今回の臨災局の運用が過去に例の無い期間に渡っていることや、ボランティアを中心に運用され人員的にも金銭的にも不安定である状況を伺い、臨災局が市民の身近な防災メディアとして機能していることを実感しました。このような背景から、相談に対して MaitouAPC を開発して無償提供することにしました。これこそが、一人っ子だった自分が幼い頃からコンピュータに遊んでもらい、その後の人生で常にコンピュータに助けられてきた者であり、そして放送技術を生業としている者としての社会的責任だと感じたからです。


2012年5月 女川さいがいエフエムにて

まいとう情報通信研究会では IT 技術による持続可能な社会をテーマの一つとしており、技術者による自らの技術に対する恩返しの精神から生まれたのが、この MaitouAPC です。

ソフトウェア使用許諾契約

本ソフトウェア(MaitouAPC、MaitouEDPS、監視操作端末)は下記3条項の範囲内で、無償使用することができます。全てのコードはオリジナルで、GPL/LGPL 下のライブラリには静的・動的リンクもしません。

  • 本ソフトウェアは無保証、無サポートです。
  • 本ソフトウェアの再配布を禁止します。
  • 本ソフトウェアの権利は、まいとう情報通信会の開発者に帰属し、本ソフトウェアの権利を放棄するものではありません。

動作環境と主な機能

MaitouAPC 本体は、ソフトウェアを頒布しているディストリビューションの Linux マシンで動作します。現在は Lubuntu 14.04 LTS を対象としたバイナリを提供しています。その他、監視操作端末に最低1台の Windows マシン、制御イベント作成に最低1台の「Google Chrome6 以降かその派生ブラウザが動作する端末」が必要となります。システムの主な特徴は以下の通りです。

  • 制御データは放送日単位の CSV ファイル。
  • 一日は 32 時間制。24〜32時前までの任意時刻で日替可能。
  • 制御状態やアラーム表示は SYSLOG 経由の専用アプリで可能。
  • データ変更は制御 3 秒前まで可能。
  • 一日最大 100,000 イベントまで。
  • 制御トリガは、時刻確定、アンタイム、デュレーションに対応。
  • アンタイム制御は内容により -3, 0 秒 TAKE のどちらかになります。
  • -3 秒か 0 秒 TAKE かは TAKE ボタン上部に表示されます。
  • 緊急操作端末では SKIP, TAKE, HOLD の手動操作が可能。
  • MaitouEDPS では Next イベント先を修正する緊急指示が可能。
  • 被制御機器は MTX SW’er x 1、送出機 x 3 台まで対応。
  • MaitouAPC 本体が音声の送出装置にもなれます (MPD使用)。
  • 1台の MaitouAPC 上で送出機3台を全て MPD で運用可。
  • MPD 特定ポートに BG DOWN 制御を行ってコメント OL が可能。
  • 機器モジュールごとに一定範囲での制御タイミング調整が可能。
  • 設備構築と運用に UNIX と番組送出の知識が必要です。
  • タイミング精度は PC ベースとお考え下さい。
  • 放送確認書の発行機能はありません。
  • 全てオリジナルコードです(libc のみ MIT License のものにリンク)。
  • GPL/LGPL 生成物は静的は勿論、動的リンクも使用していません。
  • 一切の動作保証はありません。自己責任でご使用下さい。

システム構成

動作には最低2台のPCが必要です。


システム構成例
MaitouAPC / MaitouEDPS サーバ … 1台
MaitouAPC 本体と MaitouEDPS サーバの機能を持つ Linux マシンです。推奨デストリビューション(Lubuntu 14.04LTS)で syslogd (rsyslogd)、Apache, PHP が動作する環境を構築して下さい。送出機に MPD を使い、これを MaitouAPC 本体で動作させる場合は MPD や Samba デーモンも必要です。MaitouAPC が対応するシリアル被制御機器(SW’er, 送出機)を使う場合、制御の種類に応じた RS-232C や RS-422 のシリアルボード、USB-シリアルケーブル等が必要となるため、このシリアルポートをデバイスファイル経由でアクセスできる状態としておいて下さい。
監視操作端末 … 1台以上
MatiouAPC の動作監視、緊急の手動操作を行う端末として使用します。Windows (XP以降) で動作します。本体マシンとネットワーク接続されている必要があります。Wine 環境でも動作しますが、MaitouAPC 本体上で使うことは負荷の観点からお勧めしません。ネットワーク上の複数マシンで起動できます。
MaitouEDPS 端末 / ファイリング端末(MPD用)…(1台以上)
動作監視しづらくなる点を気にしなければ、監視操作端末と同一マシンでも構いません。制御イベントデータの編集を行う端末として使用します。Google Chrome6 以降か、その派生ブラウザが動作する必要があります。ネットワーク上の複数マシンで使用できます。送出機として MPD を使用する場合は、素材のインジェスト端末としても使用するため、Samba クライアント(CIFS) になり得るマシンでなければなりません。
Routing SW’er(任意)
各送出機の画音を入力し、MaitouAPC でスイッチングするための Routing SW’er です。システム構成により、送出機出力をそのまま本線出力とする場合は不要。ラジオ目的で MPD しか使用しない場合も、MaitouAPC は本体内での MPD ミキシングに対応しているので不要。
送出機(任意)
MatiouAPC が対応する外部送出機です。Routing SW’er しか使用しない場合は不要ですし、ラジオ目的で MPD しか使用しない場合も不要です。

対応デバイス

現在、下記のデバイスに対応しています。但し、動作保証するものではありません。対応機器の追加は積極的に行っています。シリアル制御または LAN 制御可能で、プロトコル仕様書をご提供頂ける機器であれば前向きに対応します。各デバイスへの対応は、MaitouAPC に組込むプラグインモジュール方式で対応します。各プラグインモジュールの仕様は「プラグインモジュール」をご参照下さい。

Routing SW’er
FVA HD-SDI ルータ (RS-232C/RS-422制御)
SONY PVS-1680S, PVS-880S (RS-232C制御)
送出機
Harris VDCP 対応機 (RS-422制御)
SONY 9pin プロトコル (RS-422制御)
TASCAM SS-R1/SS-CDR1 (RS-232C制御)
Linux MPD (Music Player Daemon) (LAN制御)